元会長が3年連続で株主提案を実施したSAAFホールディングス。今度は対峙した前社長が追い出され、会社を乗っ取ったホワイトナイトに「委任状争奪戦」を仕掛ける展開に…
2026年3月号 DEEP

前社長と対峙するSAAFホールディングス左奈田直幸社長
昨年6月の定時株主総会で取締役が刷新され、市場関係者の間で「会社を救うはずのホワイトナイト(友好的買収者)が逆に会社を乗っ取った」と話題になったSAAFホールディングス(旧・ITbookホールディングス、東証グロース市場上場)が再び揺れている。創業者の一人で、前代表取締役社長の前俊守氏(59)が1月27日、臨時株主総会の開催と取締役の改選を求める株主提案を行ったのだ。
昨年4月30日、SAAFHDは、前氏が経営不振の責任を取り、社長を退任したと発表した。しかし、今回、前氏が提出した株主提案の文書によると、(同氏は)内部告発や怪文書が出回り、追い落としがあったと主張している。
関係者によると、前氏は社外取締役の塚本勲氏(82)から経費の私的流用と管理責任を追及され、事実無根または誇大なものと主張。4月30日の取締役会でも当初は辞任要求を拒んだという。だが、同社は2021年3月期の有価証券報告書の虚偽記載で東証に改善報告書を提出していたことから、同氏が辞任しなければ、株式が上場廃止になる恐れがあった。そのため、やむなく辞任要求を受け入れたという。一方、前氏は社内調査を求め、大本総合法律事務所から調査報告書がSAAFHDに提出されたようだ。これまで同社は調査を実施した事実を公表していなかったが、前氏の株主提案を受け、内部調査委員会を設置し、告発内容が事実と認定されたことを2月6日になり、ようやく明らかにした。
なぜ、前氏が排除されたのか。そこで投資会社フレンドリーパートナーズ(FP)代表の古川勝博氏(59)の存在が浮かび上がる。ITbookHDは、元大和証券常務でシーマ(現・NEW ART HOLDINGS)社長などを務めた恩田饒氏(91)が経営するコンサルティング会社ITbookと、前氏が創業した地盤調査改良会社サムシングホールディングス(現・サムシング)との経営統合で18年10月に誕生、24年9月に現在の社名となった。21年6月の株主総会で、会長で高齢の恩田氏が退任した後、不祥事が相次いで発覚した。
他方で復帰を目論む恩田氏は22年6月の株主総会を前に、取締役改選を求める株主提案を提出。そこで、前氏は知人に紹介された古川氏と協議のうえ、FPがホワイトナイトとしてITbookHDを支援することに合意。FPが無限責任組合員を務める投資ファンドを引受先とする第三者割当増資を行ったことで、同社が筆頭株主となった。恩田氏は23年から3年続けて株主提案を行うも、前氏と古川氏のタッグが奏功し、いずれも否決されている。
2人の関係は盤石とみられていたが、経営陣への内部告発をきっかけに、昨年には前氏や同氏に近い役員が追放された。昨年6月の株主総会で、FPの息のかかった役員が送り込まれ、ホワイトナイトが経営の実権を握る体制が確立された。そして、これに不満を持った前氏が反撃に出た格好だ。前氏は復帰に向けて、本格的なプロキシーファイト(委任状争奪戦)も辞さない構えだという。
関係者によると、昨年9月末現在のSAAFHDの持ち株比率はFP側が9%強、前氏側が10%台半ばにのぼる。SAAFHDの過去5年間の株主総会の議決権行使率が60%前後で推移している点に鑑みると、全株式の40%程度を押さえていれば、4月初めの開催が見込まれる臨時株主総会で行使率が上昇した場合でも、過半数は十分確保できるとみられる。もちろんこれを前氏が実現するためには、強力な援軍の存在が必要不可欠だ。
その一方、前氏が提案する取締役候補には仕手銘柄の関係者が含まれているとされ、きな臭さも残る。前氏の株主提案について、同社は「継続的に事実に基づいて、前氏の指摘、見解の誤解を正すべく、意見を表明する」との見解を示した。本誌は同社に調査報告書を公表しなかった理由などについて、文書による取材を申し込んだが、期日までに回答はなかった。SAAFHDの経営はますます混迷の様相を呈している。