連載/病める世相の心療内科/不安で人々を縛る「アラート地獄」/遠山高史・精神科医

2026年7月号 LIFE [病める世相の心療内科]

最近の世界の様子を見聞きすると、まるで悪夢を見ているような気になってくる。悪夢は目が覚めたときに消え、むしろほっとした気分をもたらすものだが、眠られぬ夜、頭を駆け巡る悪夢に似た不安は、その後の浅い眠りから目覚めると再びよみがえる。世界には無数の悪党どもが跳梁し、言いがかりや、うそ、誇張で人々を支配している様が日々報じられる。これに加えて、情報過多と複雑化した社会からくる「アラート地獄」が人々を縛り、白昼の悪夢となっていやしないだろうか。例えば、薬の効能と副作用が書かれた情報誌は、毎年厚みを増し、めったにない副作用のことまでおびただしく書かれている。網羅的に羅列されているために、服用後の身体症状がよくある副作用か、まれな副作用かの見極めがつかず、結局、確認の検査をすることになったりする。患者の側も、氾濫するリスク情報によって過度に不安が喚 ………

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